イギリスの国民投票でEU脱退が決まったとか、実質賃金を4%も低下させたアベノミクスを50%近くの人が支持しているとか、日本の大学のランキングがどんどん下がるとか、明るくない将来を示すニュースが充ちみちています。
情報が増えるとともに、状況理解も判断も難しくなっています。ある立場で決定しようとしても「そんな主張をする奴はおかしい!」とすぐに罵声が飛んできます。それを確かめようとしても、新しいデータや主張がどんどん出てきて、何だか分からない。結局、声を大きくしている人間の要求が通る(ような気がする)。
そういう「弱肉強食」的状況を反映してか、私のところにも「お前の本は、はじめて書く人間への配慮が足りない」とか、「真似すればすぐ合格する解答例を書け」とか、ひんぱんにお叱りが来る。こういうコメントは、自分はバカだ、と宣言するようなものので、本来なら恥ずかしくて言うのがはばかられた内容と思うのだけど…最近は堂々と書く人が増えてきました。
でも「本質をやさしく書く」ことは、それほどやさしいことではありません。なぜなら、大半の本質は一言でまとめるにはあまりに複雑で、だからこそ、それをやさしく語るのは至難の業だからです。
もちろん、学ぶ人の方もそれなりの準備が必要です。知識と方法論を整理し、問題に当てはめ、理論と現実をつなぐ論理を考え、表現規則にも配慮しながら、自分の考えを書く。そういう地道な作業をすっ飛ばして、結果だけを求めるような態度が強すぎる感じがします。
もし用意がない人に「やさしく語る」としたら「こんなに簡単なんだよ、他のことはもう気にかけなくて良い!」と「本質を曲げて」教えることになります。でも、これは邪道ですね。
そういえば、精神医学の本に、悩んでいた人が「あー、何だ、こんな簡単なことだったんだ。悩んでいたのがバカみたいだ!」と言い出したら、まず精神病の発症を疑うべきだ、という記述がありました。現代の人は、むしろ正気でいるより、手っ取り早い満足を望んで、精神病の発症を気にかけないかもしれませんね。
その意味で、現実を説明するために、簡単で分かりやすい理屈に頼りすぎてはいけないと思います。あくまでも問題に即して、その仕組みを解きほぐしつつ、何とか解決可能な形に持ち込む。その辛抱強い時間に耐えられる体力をつけなければなりません。
7月末から、ボカボでは「法科大学院小論文 夏のセミナー」と「慶應・難関大学小論文 夏のプチゼミ」の二つが開催されます。大学や大学院受験用の講座ですが、情報があふれる中で、どうやって「病」に陥らずに、自分なりの妥当な判断の軸を立てていけるか、追求する講座です。大学も、そういう軸を持っている学生なら、のどから手が出るほど欲しいのです。
今年も、じっくりと、しかし徹底的に文章の考え方と解き方をお伝えします! 乞うご期待!
分かりやすく整理されている先生の本にとても助けられています。文章の切り口の鋭さや適切な情報量は、単なる対策本ではなく読み物としても面白いです。表面的な対策ではなく、現実問題とテーマの結びつきを踏まえ最適解を論じる方法が学べる本質的な論文試験対策の本だと思いました。
返信削除ありがとうございます。私の本がお役に立てれば、とてもうれしいです。
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