葉桜の季節になりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
この三日坊主通信も去年の夏あたりから更新していなかったんですね。なぜ、そんなに間が空いたのか? 単純に時間がとれなかったこともあります。
今年の1月から、年度版2冊と新刊3冊が出ました。四ヶ月間に5冊という、ちょっとありえないペース。もちろん、これらの内容は去年から用意していたものですが、それにしても多いですね。
当然のことながら、他のことはできず、去年後半は、ずっと本を書いていました。ブログを書くなどという心の余裕はまったくない。いいネタだったら、むしろ、それを本の中に入れ込みたい、というのも自然な心理でしょう。
よく、個人発のメールマガジンは成功しない、と言われます。なぜか? ネタが無くなるからです。いいネタがあったら、それは原稿料の出る雑誌や、印税が入る書籍に書きたいと思う。それでも、メルマガは毎週発行しなければならない。いきおい、メルマガは、どちらかといえば、どうでもいいような記事を書いてお茶を濁す。面白くなくなるので、読者が減って廃刊。宜なるかな。
私も、ブログ記事の間隔があくので「何でも良いから書いてくれ」とよく言われるのですが、それをやると質が落ちる。しかも、忙しい中で書くと、推敲が十分でないので雑な文章になる。そんなものを、誰が読みたいでしょうか?
とはいっても、半年以上何も書いていないのは、さすがに言語道断ですね。とりあえず、今回出した本の紹介から始めましょう。
1『公務員 論文試験 頻出テーマのまとめ方』実務教育出版
もう2002年から出している公務員の小論文試験によく出てくるテーマについて解説し、考え方や答案例を書いた本です。毎年、巻頭にその年話題になったテーマを出し、その他の部分も、大きな変化のあったときは、できる限り変えています。累計でもうすぐ30万部。この分野のロング・ベスト・セラーです。
2『リアルから迫る 教員採用小論文・面接』実務教育出版
こちらは、2014年から出ているシリーズです。教育は、みな一家言ある分野ですが、だいたいがイデオロギーに囚われ、エビデンスがない主張が多い。この本では、主に教育社会学の知見に基づき、科学的な分析・提案につなげています。教育現場の先生からは「面白い」と言われており、教育問題をクールに捉えた本です。
3『吉岡のなるほど小論文講義10 改訂版』桐原書店
これも初版は2002年。アカデミック・ライティングの方法を大学入試小論文に適用しています。その斬新さは、今でも変わりません。今回は、2020年に広く行われると言われるヴィジュアル型問題の対処法と、第10講の「対立を超えて、レベル・アップする」を大幅に書き換えました。この第10講の内容は、いわゆる弁証法の考え方を高校生レベルに理解できるようにした画期的な内容のはずです。
4『文章が一瞬でロジカルになる接続詞の使い方』草思社
接続詞は、日本文法では冷遇されています。しかし、これを工夫すると、文章の明瞭さは大幅にアップします。この分野では石黒圭氏の本が知られていますが、この本は論理的文章を書くことに特化しました。接続詞を代えるだけで、ニュアンスや意味が変わってくる方法を示しました。最後は、新聞コラムを題材に、不明瞭な文章を明瞭にするプロセスまで。もう、「○声×語」などを文章の手本にしてはいけません。
5『文章が面白いほど上手に書ける本』あさ出版
3,4などでの内容を、ビジネスマン向けに解説した本です。文の作り方、段落のまとめ方、接続詞の使い方、論証や例示の仕方など、知っておけば、ビジネス文書にすぐ応用できる内容になっています。
個人的な感想ですが、現在は、論理的文章の原理である論理・議論にとって良くない時代だと思います。この間から騒がれている「森友学園」の事件でも、国会での答弁があまりにもまやかしに満ちている。「データは自動的に消去される」とか、スパイ映画もどきの白々しい答弁をして、すました顔をする高級官僚がある。あるいは「関わりがあったら議員を辞める」とかうわべだけ勇ましい言葉を連発する政治家。「言葉には責任を持つ」「ウソをついてはいけない」「誠心誠意対応する」という倫理がまったく通用しない。
むしろ、世の中では、大言壮語する、証拠がなくても気にしない、それどころか、証拠を突きつけられてもしらを切る、法律を無視する、あるいは、発言力のある人間が「××国から攻撃されたら、テロリストとなって、反対派を殺す」などと広言する異様な世界になっている。これは。論理的文章が目指す、根拠がある主張をする、理がある議論には従う、という倫理的態度の対極にあります。
その意味で言うなら、現在の政権のやっていることは、まことに不道徳で非倫理的です。論理も公平もあったものではありません。若い人々が、これを見てどう感じるか? 「言葉には責任を取らなくて良い」「ウソをついてもしらを切ればいい」「批判されたらキレれば良い」もし、そういう「教訓」を得るとしたら、限りなく教育の未来に悪い影響を与える政権と言えましょう。しかも、そういう人々が「道徳教育」を言うのだから、噴飯ものです。
とはいえ、私は、それほど、日本の先行きに絶望はしていません。今年も、春にWeekend Gymを開催したのですが、若い人々が、きちんとした論理的な文章の書き方を学びに来ました。どの人も、講座を終えた後「論文を書くのが楽しくなった」「考えるのは面白い」「字数をちゃんと埋められるようになった」「自分の思うことが表現できるようになった」と言ってくれます。私も、教えていて久々に楽しみました。こういう人々がいる限り、日本は変なことにはならないのではないか、と思います。
このブログを読んでいる人も、ぜひ、上記の本のどれかを手にとってご覧下さい。その楽しさがきっとわかると思います。
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