久しぶりのエントリーですが、今日は過去の受講生のメールを紹介します。彼は関東地方の小さな大学の出身。大学に入ったものの希望校でなかったことで、自己評価と外からの評価のギャップに苦しんでいるようでした。
はじめて会った頃は、癖のある青年という印象でした。法科大学院セミナーでも、他の出席者に対して、わざわざ挑むように奇妙な議論を展開して楽しんでいるようなところがあった。自分の存在価値を証明しようと躍起となっていたのかもしれません。それが、他の人からの鋭いツッコミにもまれて、必死に問題を考えるようになった。「でも、まだもう少しかかるかな」と思っていたところで、国立大学の法科大学院に合格。
半年後、報告に来た彼を見て驚きました。10kg近くやせて精悍な感じになっていたからです。勉強の厳しさだけではない。話し方からも力みが取れ、強引な論理展開が少なくなってバランスが取れ、説得的になっている。勉強に真剣に向き合う機会を得ると、これほど人間が変わるものか、とちょっと感動しました。
それから二年。最終学年を迎え、リサーチペーパーを書きたいのだけど、相談に乗ってほしいという依頼が届きました。上京した彼はプランを熱っぽく語り、私もそれに遠慮なくコメントし、議論を進める。「これでやっと方向が見えました」と帰って行きました。
以下に、リサーチペーパーを書き上げてから、彼が送ってくれたメールを、ほぼそのまま掲載します。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
春先に相談させていただきましたリサーチペーパーにつき結果が出ましたのでご連絡いたします。リサーチペーパーの題目は「....」です。
結果の方は、自分でも驚いているのですが、なんと80点頂けました。Defenceでも、主査のA教授、副査のB教授に褒めていただくことができました。
もっとも、半期という時間的制限及びタイムマネジメントの下手さから、内容はまだまだ不十分なものであり、どうだ、と誇れるものかというと決してそのように思える出来であるとは考えていません。しかし、良い意味で納得のいく結果を出すことができたと考えております。
一目置いている人たちに褒められると嬉しいものですね。
一から調べて書くという作業はエキサイティングでした。とはいえ、論文を漁り、これを読破していく作業は時として苦痛そのものでした。学者の文章は読みにくいものも多く(実務家の書いた論文も同様でした。もっとも抽象的な分野だからというのもあるのだと思います)、内容の理解が自分の理解で正しいのか、ということにつき悩みました。また、論理的にはあるはずの、ある組み合わせにつき言及している論文がほとんど見つからず、これを自説とするので困りました。
とはいえ、一から文章を作り上げる経験ができたことは有意義であり、満足しております。
身の程をわきまえず...掲示板に貼ってある懸賞論文に目が行きます。
私の当面の目標は新司法試験の合格となりますが、これとの関係は高くないものの、とても良い経験ができました。これもコーチングしていただいたおかげです。
高揚感・満足感とともに、知・学問に対する謙遜な態度が素直に伝わってくるよい文章ですね。
とくに嬉しかったのは、彼の感じている喜びが純粋なものであることです。現代では、勉強というと実利を目的としがちです。でも、そういう勉強は、苦しいばかりで結果が出ない。むしろ、何かをなしとげるという喜びを感じること。これが、遠回りのようでも勉強が効果的になる唯一の方法でしょう。そういう境地に達する環境を提供できたことは、ボカボにとっても大きな誇りです。
彼がそれを味わってくれたことは、次の司法試験にもきっと役立つと思います。これからも楽しみつつ、頑張ってくれることを期待しています。
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